玄関の設計は、日々の生活に大きく影響する重要な工程です。
中でも玄関の階段やポーチは、デザイン性の前に、機能性の観点から設計する必要があります。
一方で、玄関の機能性はあまり重視されていないので、設計段階のちょっとした見落としが、生活の質を落としたり、メンテナンスが大変といった失敗につながります。
この記事では、玄関設計で陥りがちな失敗例とその原因を徹底的に解説し、改善ポイントや実践例、具体的なアドバイスをお届けします。
ぜひ本記事を参考にして、理想の玄関を実現させてください。
玄関設計の失敗例とその原因

注文住宅の設計において、初期段階で決定する玄関(外)は、家全体のデザインバランスや実用性に大きな影響を与えます。
玄関(外)の広さによって、建築面積の上限が決まり、各部屋の大きさも決まっていきます。
一方で、部屋の広さを大きくしようとするため、玄関やポーチを狭くすると、様々なデメリットがあります。
- 雨の日、傘をさす・畳む際に濡れる
- 外階段の高さが急勾配になる
- 階段の段差を低くすると、水害時の被害が大きくなる可能性がある
- 水道メーターや下水管の施工も考慮しないと、老後のスロープ増設などもできなくなる
このように、玄関は家の顔ということで、デザインを重視しがちですが、安全面からも非常に重要なエリアです。
ここでは、よく見られる失敗例とその背景、さらに設計段階で見落とされがちなポイントについて詳しく解説します。
玄関ポーチの良くある失敗例
階段の設計
玄関の階段は、必ず事前に蹴上と踏面の寸法を確認しておきましょう。
蹴上は高すぎても低すぎても、つまづきやすいですし、踏面が狭いと安定感がなく転倒のリスクがあります。
駅などの公共施設の階段は、上りやすいように「蹴上×2+踏面=60cm」のバランスがとられています。
これは、日本人の標準的な歩幅に合っているためです。
✅ 理想的な階段は、バリアフリーを考慮された電車の駅の階段と同じ寸法
また、将来の老後の生活を考慮すると、蹴上は16cm以下、踏面は30cm以上が理想的です。この寸法だと勾配は約27度ほどになり、緩やかで安全な階段になります
低ければいいわけでも、広ければいいわけでもないので、理想的な階段の広さを取ったうえで、室内の広さを決定していきましょう。
✅ 小学校の階段は低学年用に蹴上が低くなっていますし、室内の階段は蹴上が高いことが多いです
ポーチの広さの設計
快適な玄関ポーチは、一般的に横幅270cm、縦幅180cm程度の広さ(約2~3畳)とされています。
郊外では面積を広く取れるかもしれませんが、特に都内の場合はポーチを最低限の面積にする傾向があるため注意が必要です。
例えば家族がいた場合、一緒に外出しようとしたとき、一人が先に玄関を出て、一人が後から靴を履いて玄関から出ようとしたとき、先に出た家族が玄関前に立っていたら、扉を開ける際にぶつかってしまいます
また、以下のような用途もあることから、家族の人数やライフプランを考えたうえで広さを決定しましょう。
- 雨の日に傘を指したり、畳んだりするスペースが狭い
- 傘を室外に置く場所がない
- 宅配ボックスを置くスペースがない
- ベビーカーや車いすを置く場所がない
あまり「使う」ことを意識しない場所ですが、狭すぎると非常に不便でストレスがかかります。
住宅の建築後は、ポーチの広さは変えられないため、改善のハードルも高く、事前にシミュレーションをすることをオススメします。
設計段階での注意点―見落としがちなポイントとは?
土地や周辺環境との調和
玄関の設計は、最初に使い勝手とメンテナンス性をチェックしましょう。
機能性を確保しておけば、オシャレにするのは入居1年後でも全然間に合います。
ここでは機能として検討すべき具体例を挙げてみます。
- 土地が傾斜しているため、排水を考慮しないといけない
- 日陰の時間が長い場所は、コケやカビが生えにくい設計が必要
- 太陽の陽射しが強く、玄関周辺だけ熱膨張する可能性がある
- 近隣住民の窓の位置と、玄関が、正面にならないようにしたい
- 駐車場から降りて玄関までの動線を短くしたい
- 冬は北風が強い地域なので、北側には玄関を作れない
玄関というと、外構・オシャレを気にしがちですが、設計次第では、すぐにコケやカビが生えるので、日常的な利用やメンテナンスのしやすさも考慮しましょう。
排水計画、雪や落葉対策など、季節ごとの使用感や手入れの負担も見落とされがちなポイントです。
✅ 目隠しフェンスの高さやコンセントの設置場所、桝(蓋)の耐荷重といった、玄関以外にも注意すべきポイントはたくさんあるので、追って記事にします
経験者は語る!失敗を回避するための具体的なアドバイス
玄関設計の手順
玄関の設計は手順が大事です。
なぜなら玄関を決めると、自ずと間取りも決まっていくからです。
まずは機能性・メンテナンス性を重視して場所と広さを決めましょう。
- 雪や雨、カビやコケ、落ち葉や日射熱などの自然環境を考慮する
- 前面道路や駐車場からの動線、近隣住民の視線などの室外環境を考慮する
- 階段とポーチの使い勝手を考慮し、段数や広さを決める
次に、家族構成やライフスタイルを考慮し、ベビーカーや車いす、スロープなどの将来のリフォームも可能な配置にしておくと良いと思います。
ここまでしておけば、家の設計後に、デザインを重視した外構工事を実施できるようになります。
外構業者の選び方

外構工事は、業者の職人さんと円滑なコミュニケーションが非常に重要です。
✅ 外構業者は、家の設計と違って関わる時間が短く、連絡が希薄になりがち
勾配が悪く水が流れ切らずカビになってしまったり、コンクリートが割れてしまったりと、住んでいると必ずメンテナンスする必要が出てきます。
中には「腕は立つ。俺の創作物はこれだ!」みたいな職人さんもいます。
それはそれで素晴らしいのですが、入居後、数年は修理依頼の可能性があります。
住宅メーカーお抱えの外構業者もいますが、外構業者は相見積もりで比較されることが前提の業界になっていますので、気兼ねすることはありません。
必ず複数社の見積もりを依頼して、その会社の強み、心配な点を確認しましょう。
ただ…どんなにデザインが良くて、腕が良いと言われる業者であっても、補償やコミュニケーション力は重視して選ぶことをオススメします。
早めに外構の見積もりを取っておくと、建物本体の予算とも調整しやすい(オプション料金など)です。
まとめ:理想の玄関ポーチを実現するために

家の設計というとどうしても間取りに注目しがちですが、玄関の設計も入居後の生活において、新居の満足度に大きく影響します。
同じ環境が2つと無い土地だからこそ、玄関の設計は非常に難しいです。
一方で、これまで紹介してきた手順で、検討ポイントをクリアできれば、後悔しない玄関設計ができると思いますので、ぜひ事前に徹底したプランニングをオススメします。
しっかりとした準備をすることで、楽に、そして安心して長く快適に暮らせる玄関設計をしましょう!