間取り設計中。どんな窓でも、そんなに変わらないかな?
採光が大事だから、窓は多く、大きいものを設置すればいいよね?
窓が大きければ大きいほど部屋が明るくなるわけじゃないですよ!
断熱性も落ちるし、外からの視線も気になってしまいます!
窓は、入居後の満足感を大きく左右する非常に重要なポイントです。
設置する高さや方角、大きさや種類によって、最適な窓が違ってきます。「夏暑くて冬寒い」なんてことにならないように、窓の特徴を知って、最適な場所に設計しましょう。
注文住宅の窓選びで重要なポイントとは?
窓の役割(採光・断熱・防犯・通風・デザイン)
窓の役割は大きく5つあり、窓の設計には、窓の役割と窓のデメリットを考慮する必要があります。
- 採光
- 通風
- 断熱
- 防犯
- デザイン
なぜなら採光を重視するため窓を大きくしすぎると様々なデメリットがあるからです。
- 断熱性能が著しく低下する
- 外からの視線が気になる
- 家具を置く場所が減り、壁も活用しにくくなる
- 防犯性が下がる
一方で、普通の大きさの窓でも、北側についた窓では採光が足りずに暗いなど、窓本来の役割を果たせなくなることもあります。
採光については照明計画とセットにすることで、部屋の明るさは保てますし、軒の設計とセットにすることで、断熱対策をとることもできます。
窓選びは、窓の役割と機能に加え、関連する設備をセットで設計しましょう。
窓の断熱性能は想像以上に低い?!その対策は軒の活用
窓の断熱性は、壁に比べて、極めて低いです。
現在のトップクラスの性能を誇るトリプルガラス(サッシ)であっても、熱貫流率は、一般的に0.9~1.13W/㎡・K程度です。窓の中ではダントツ性能が良いですが、壁に比べると、壁の方が断熱性が高いことが分かります。

つまり、採光や通気を重視しすぎて窓を大きくすると、家の断熱性能が落ちて、以下の原因になる可能性があります。
- 冬寒い(暖房費がかさむ)
- 夏暑い(冷房費がかさむ)
- 外からの視線が気になる
- 結露の可能性が高まる(カビの原因)
- 防犯性が落ちる
これらの対策は、無理に大きい窓を設置しないことですが、それでも開放感が欲しい場所(リビングなど)がある場合は、「軒」を設置しましょう。
窓は日射熱を通しやすいですが、日射熱を室外で遮断できれば、夏、室内に熱がこもることを防ぐことができます。
実は、日射熱は太陽の光によって発生する熱で、畳2枚分ほどの窓から入ってくるエネルギーはコタツ1台分程度と言われています。(参照:モリシタ・アット・ホーム)
夏、一生懸命冷房を入れながら、家の中でこたつを付けているのと同じです。
軒を設置することで夏の快適性は格段に向上するので、窓を設計する際はぜひ検討してみてください。
もし、斜線制限や建築制限の関係で、軒を設計できない場合、サンシェードを活用することができるので、足場が組まれている最中に、外壁へフックの取り付け(サンシェード設置のため)を設計に入れましょう。


窓からの採光は大きさに比例しない
残念ながら、窓の大きさは、部屋の明るさに正比例しません。
「明るい部屋にしたい、と思って窓を大きくしたけど、思ったほど明るくない」こんなことを聞いたことはありませんか?
窓の大きさは、一定の大きさまでは明るさに比例しますが、一定以上大きくしても、そこまで明るさに比例しません。
極端な話、1辺が10cmの窓と、1辺が1mの窓では採光は大きく違います。一方で、1辺が2mの窓と、1辺が3mの窓だと、採光は大きく変わりません。
採光は、窓の大きさに加え、季節や、窓が設置している方角と、窓が設置してある高さ、そして隣の建物の高さの影響を受けるからです。
季節や方角
季節によって日射角度や日射時間が変わります。北側は太陽が差し込む時間は短いですし、夏と冬でも日中の長さは違います。

夏の日射は真上に近い角度ですし、冬の日射は低い角度になっています。
部屋の位置だけでなく、その部屋を使う時間帯を考え、その時間帯に採光が必要なのか、そしてその時間帯に採光を見込めるのかを検討しましょう。
夜しか使わない書斎はあまり採光に気を使う必要はないですし、寝室は朝の陽射しが入る角度を考え、ベッドの向きなどを検討することにも役立ちます。
照明計画とセットで設計する
採光があまり期待できない部屋でも明るさを確保することは可能です。
1階・北側・寒冷地・冬至・雨などの条件によって、日射を期待できない場合も、最適な
照度(ルクス(lx))と光束(ルーメン(lm))、光の色(単位:ケルビン(K))の照明を選択すれば、まったく暗いと感じることはありません。
一方で、広い部屋の真ん中に、光の強い照明を一つ設置する場合と、部屋の全体にダウンライトを設定する場合では、全体の明るさは変わってきます。
壁際にダウンライトを設置することで、壁に光を反射させて、より明るく感じさせる方法もあります。
照明計画については、パナソニックが無料で「明かりプラン」というサービスを提供しています。
実際の照明を体験すると、「本当に1階は明るくなるのだろうか…」という不安が払拭したりするので、ぜひ利用をオススメします。
注文住宅の窓の種類と特徴|メリット・デメリットを比較
一般的に窓は5種類に分類できます。
- 引き違い窓
- 滑り出し窓
- FIX窓
- ルーバー窓
- 天窓(トップライト)
各窓の特徴、性能を把握し、その場所に最適な窓を選びましょう。
引き違い窓
引き違い窓は最も一般的な窓です。使いやすさと実用性を兼ね備えた窓です。
- 窓を開けたときに室内・室外のスペースをとらない
- 網戸の取り付けが容易で、虫の侵入を防ぎながら換気が可能
- 部品が少なく、修理やメンテナンスが比較的容易
- 窓枠のレールに埃や汚れが溜まりやすい
- 構造上の特徴により、完全な気密性を確保するのが難しく、他の窓に比べ、気密性と断熱性が弱い
- 開口部の半分しか開かない
引き違い窓は、気密性が低いですが、外側にフックさえつけておけばサンシェードも設置しやすく、シンプルな構造のため、故障しにくいので、長期間安心して使える窓です。
FIX窓(はめ殺し窓)|採光性抜群だが開閉不可
FIX窓は開閉機能を持たない固定式の窓で、高い気密性・断熱性に優れ、採光性と眺望を確保でき、高所にも設置できる窓です。
- 気密性が高く、エネルギー効率に優れる
- 開閉部分がないため、経年劣化による性能低下が少ない
- 細いフレームの窓を選択できる
- 防犯性が高い
- 大型のガラスパネルの設置が可能
- 雨風や外部騒音の遮断性能が高い
- 換気ができない
- 高所や手が届きにくい場所に設置すると、清掃がしにくい
- 非常時の避難経路として使用できない
FIX窓は、高い気密性・断熱性と優れた採光性を備えた窓のため、採光を重視する空間に最適です。
ただし、清掃やメンテナンスの観点から、設置位置については十分な検討が必要です。
縦すべり出し窓・横すべり出し窓|気密性が高く断熱向き
すべり出し窓は、ヒンジを中心に窓が外側に開く窓で、閉じた時にガラスがフレームに密着する構造のため高い気密性があり、換気効率と両立された、省エネ性能に優れた窓です。
- 気密性・断熱性が高い
- 気密性に加え、換気が可能
- 防犯性が高い(窓の重なり部分が多いため)
- 経年劣化でヒンジが緩む可能性がある
- 雨水を流すサッシのレールに水が溜まりやすく、結露が原因でカビになりやすい
- 大きなサイズの場合、重くて嚙み合わせがズレる
すべり出し窓は、気密性と断熱性に優れているため、特に省エネ性能を重視する場合におすすめです。
一方で、気密性にこだわりすぎて滑り出し窓を選ぶと、カビやメンテナンスも大変なので注意が必要です。

ルーバー窓(ジャロジー窓)|デザイン性◎だが防犯面に注意
ルーバー窓は複数の細長いガラスやアルミのブレードを水平に配置し、同時に角度調整できる窓で、換気効率と採光調整に優れていますが、気密性・断熱性は他の窓と比べて低いです。
- 換気量を細かく調整可能
- 採光コントロールが容易
- 清掃が簡単(ブレードの取り外しが可能)
- 風向きに合わせてブレードの角度調整が可能
- 気密性が低く、エネルギー効率が悪い(エアコンの効きが悪く、電気代が上がる可能性あり)
- 防音性能が低い
- 強風時に音が出やすい(隙間風を感じやすい)
- 虫の侵入を完全に防ぐことが難しい
- 経年劣化で開閉機構が緩むことがあります
ルーバー窓は、換気と採光の調整に優れた窓ですが、気密性・断熱性の面で課題があるため、寒冷地や防音性を重視する場所に設置は避けたほうが良いと思います。
天窓(トップライト)|採光に最適だがメンテナンス性が課題
天窓は屋根面に設置する窓で、自然光の取り入れに非常に優れていますが、設置後の清掃、熱負荷の管理が重要となる窓です。
天井から採光することで、室内の奥まで光が入り込み、垂直面の窓と比べて約3倍の採光効果があると言われています。
- 自然光を効率的に室内に取り入める
- 天井面からの換気が可能(開閉式の場合)
- 空間の有効活用が可能
- 夏季の熱負荷が大きくなりやすい
- 経年劣化による漏水リスクがある
- 清掃が困難
- 結露が発生しやすいです
- 防音性能が低くなりがち(雨音等
天窓は自然光の導入に非常に効果的な窓ですが、清掃・防水処理・断熱遮熱・結露対策など、他の窓に比べ、注意しなければならない項目が多いです。
設置にあたっては必ず専門家に相談し、建物の構造や気候条件を考慮した計画を立てましょう。
後悔しない窓の選び方|用途別おすすめの窓

窓の性能を重視して配置する
窓ガラスの性能
ガラスの断熱性能は、単板ガラス→複層ガラス→Low-E複層ガラス→トリプルガラスの順で高くなり、それに応じて省エネ効果も向上します。
断熱性は、単純にガラス枚数が増えるほど、熱の移動を抑制する空気層が増えるだけでなく、特殊金属膜(Low-E膜)の追加により、熱線の反射効果が向上する仕組みです。
ガラスの厚みと層の増加により、断熱性能だけでなく、遮音性能さらには結露の抑制効果も高まります。
各種ガラスの性能比較
単板ガラス(3mm) | 2. 複層ガラス (3mm+空気層6mm+3mm) | 3. Low-E複層ガラス (3mm+空気層12mm+3mm) | 4.トリプルガラス(3mm+空気層12mm+3mm+空気層12mm+3mm) | |
遮熱貫流率 | 6.0 W/㎡K | 3.4 W/㎡K | 1.8 W/㎡K | 1.0 W/㎡K |
遮音性能 | 25〜28dB | 29〜31dB | 31〜33dB | 35〜37dB |
可視光透過率 | 88% | 79% | 70-75% | 65-70% |
価格 | 1.0(基準) | 1.5〜2.0倍 | 2.0〜3.0倍 | 3.0〜4.0倍 |
重量 | 7.5kg/㎡ | 15kg/㎡ | 15kg/㎡ | 22.5kg/㎡ |
特徴 | 最も基本的なガラス、断熱性は低い | 基本的な断熱ガラス、一般的な住宅で使用 | 高い断熱性能、日射制御可能 | 最高レベルの断熱性能、寒冷地向け |
省エネ効果の比較 | (基準) | 約15-20%削減 | 約25-30%削減 | 約35-40%削減 |
結露の発生比較 | 室温20℃で外気温10℃から結露開始 | 室温20℃で外気温0℃から結露開始 | 室温20℃で外気温-5℃から結露開始 | 室温20℃で外気温-10℃から結露開始 |
地域の気候条件、予算、期待する省エネ効果を総合的に考慮しましょう。
サッシの性能
窓の断熱性能は、ガラス面だけでなく、樹脂サッシとアルミサッシで大きな差があり、圧倒的に樹脂サッシがオススメです。
- 樹脂サッシ:熱貫流率 2.33 W/㎡K
- アルミサッシ:熱貫流率 4.65 W/㎡K
つまり、樹脂サッシはアルミサッシの約2倍の断熱性能を持っています。
アルミは熱を伝えやすい金属であるため、外の暑さや寒さを室内に伝えやすい一方、樹脂は熱を伝えにくい素材であるため、外気の影響を受けにくく、室内の温度を保ちやすいです。
例えば、アルミサッシは結露が発生しやすく、樹脂サッシは結露が発生しにくいですし、窓際の温度差については、アルミサッシは窓際と室内中央の温度差が5-7℃程度、樹脂サッシ:温度差が2-3℃程度と、樹脂サッシの方が外気温に左右されにくくなっています。
樹脂サッシはアルミサッシと比べて価格が30-40%程度高くなりますが、樹脂サッシを採用することで、年間の冷暖房費を約15-20%削減できます。
そのため、下の項目に当てはまる方は樹脂サッシがオススメです。
- 寒冷地にお住まいの方
- 光熱費の削減を考えている方
- 結露対策を考えている方
- 全館冷房を考えている方
長期的な光熱費の削減と快適性を考慮し、検討しましょう。
防犯性を高めたいなら
窓の防犯性能は、ガラスの種類と窓の構造の両方が重要です。
防犯性能を高めるには、防犯合わせガラスの採用と、二重ロック以上の錠前システムを組み合わせることが最も効果的です。
- ガラスの破壊耐性が高いほど、侵入に時間がかかり、犯罪を諦めやすくなる
- 窓の構造自体が頑丈なほど、破壊行為に対する抵抗力が増す
【窓の種類別特徴】
引き違い窓 | すべり出し窓 | 縦すべり出し窓 | |
特徴 | 最も一般的な窓タイプ | 上部が外に開く窓 | 縦に開く窓 |
防犯性能 | 標準的 | 比較的高い | 高い |
主な対策 | クレセント錠の補強 補助錠の追加 戸先錠の設置 | 多点式ロックの採用 補助錠の追加 | 上下のロック機構 多点式ロックの標準装備 |
【ガラスの種類と特徴】
強化ガラス | 防犯合わせガラス | 複層ガラス | |
破壊強度 | 通常の約5倍 | 通常の約10倍 | 通常の約2倍 |
特徴 | 割れても粒状になり、怪我のリスクが低い | 中間膜があり、割れても貫通しにくい | 断熱性能も高い |
価格帯 | 標準的(1㎡あたり1-1.5万円程度) | やや高価(1㎡あたり2-3万円程度) | 中程度(1㎡あたり1.5-2万円程度) |
防犯性能を高める対策として、防犯フィルム貼付、二重ロックシステムの導入、防犯センサーの設置など、予算と必要な防犯レベルに応じて、適切な対策を選択することが重要です。
特に、1階の窓や侵入されやすい場所にある窓は、より高度な防犯対策を検討することをお勧めします。
部屋の種類によって最適な窓を配置する
リビングに適した窓
リビングの窓は、最も滞在時間の長い場所なので、多くの要望が詰まった場所になります。
- 開放感が欲しい
- 採光をたくさんし、明るくしたい
- 外からのプライバシーを保護したい
一つの具体例として、リビングは、壁の高い場所に大型の掃き出し窓(もしくはFIX窓)がオススメです。
窓が壁の高い場所にあることで、採光しやすく、外に抜けた開放感を確保しつつ、通行人の目線の高さからは外れることが期待できます。
隣の建物(上階)からの視線や庭やベランダとの一体感がないというデメリットがあることは注意点です。
軒を作ることや、庭から直接リビングに入ると汚れも気になるので、その動線は作らないという選択肢はあると思います。
リビングの窓が東・南・西の場合は、断熱性能を生かせるので良いのですが、北側に設けるときは、採光を考慮し、少し大きめの窓にした方が良いですが、窓の形状が結露などの掃除がしやすいか確認しましょう。
寝室に適した窓
寝室の窓は、プライバシー、採光、通風、防犯性能のバランスが特に重要です。寝室の特性に合わせた窓の選び方を説明します。
- プライバシーの確保
- 静かな環境維持
- 適度な採光と通風
- 高い防犯性能
東側・南側は朝日が差し込んでくるため、窓の高さに注意しましょう。床から天井までの大きめの窓にする場合、ベッドの向きによっては朝日が強すぎてしまうこともあります。
また、地域によって風が強い向きがある場合、風切り音にも気を付ける必要があります。
寝室は、その部屋で過ごす時間帯と使い方を考慮し、窓の方角と高さを重視し、快適な睡眠環境を作れる窓の配置を検討しましょう。
窓のデザイン
窓の配置は建物の印象を大きく左右しますが、綺麗に配置するのは緻密な準備が必要です。
なぜなら、窓は内側(各部屋に必要な採光や通気、プライバシー等)からの視点で設計されるからです。
内側の視点で設計した後に、外観も良くするのは非常に困難です。各部屋の機能に応じた配置をする前に、外観が綺麗になるポイントを押さえておきましょう。
- 建物の中心線を意識した左右対称な配置する
- 上下階の窓の位置を揃える
- 同じサイズの窓を連続させる
- 窓の間隔を規則的に設定する
- 窓の縦横比を統一する
※外壁を等間隔のグリッドで区切り、グリッドに沿って窓を配置するという方法もあります
不規則な窓サイズの混在や、バラバラな位置、過度に複雑なデザインは、美しいと感じにくいです。
これらのポイントを参考に、建物全体の調和を考慮した窓配置を計画し、美しい外観デザインを実現させましょう。
まとめ|最適な窓を選ぼう
窓の設計は、窓の「性能」「種類」「部屋の方角」「太陽の傾き」「季節による変動」「照明や軒などでの対策」「防犯」「デザイン」といった、様々な要素を総合的に考えなければいけない、とても難しい作業です。
さらに、「窓は大きい方がいい」といった誤った先入観も、窓選びを難しくする要因ですが、端的にまとめると以下の手順で検討しましょう
- 部屋のどの方角に窓を設置するか決める
- 方角によって窓の大きさを決める(北側なら少し大きめ)(南側を大きくするなら軒の設置)
- 方角によって窓の高さを決める(北以外なら、壁の高い位置への設置がオススメ)
高い位置に窓を設置することで、外観の統一感も取れるようになります。
地域、環境(前面道路)、譲れないこだわり、様々な意見があると思いますが、窓設計がうまくいくと、入居後、とても気持ちよく過ごせると思いますので、慎重に検討し、ぜひあなたの理想の住宅を作り上げてください。