こんな疑問にお答えします。
トイレの換気扇の位置の決め方
トイレの換気扇の位置は主に「上部」と「下部」の選択肢がありますが、それぞれメリットとデメリットがあります。
上か下かを選ぶポイント
臭気の原因
空気の循環効率
掃除の頻度
安全性
室外への配慮
本記事を読めば、あなたの家であればどちらが良いかを判断できるので、ご自宅でどのようなトイレの使い方をしていくのかを考えながらお読みいただければと思います。
臭気の原因
臭気をキレイに換気するためには、下記の2点を理解する必要があります。
臭気の重さ
臭気の溜まる場所
具体的に説明していきます。
臭気の重さ
臭気の原因は主にウンチとオシッコの2種類あり、この臭い成分は下記のとおりです。
臭いの元 | 物質名(臭気) | 空気比重 | においのイメージ |
オシッコ | アンモニア | 0.59 | 尿 |
ウンチ | メチルメルカプタン | 1.66 | 腐ったたまねぎ |
硫化水素 | 1.18 | 腐ったたまご | |
インドール | 4.04 | 糞便 | |
スカトール | 4.52 | カビ |
つまり、オシッコが原因で発生するアンモニア臭は空気より軽いため上昇しやすく、ウンチが原因の臭気は空気より重いので下降しやすいのです。
この空気比重はあくまで「重さ」であって、臭いの多さではないので、「数値が高いから臭い」と勘違いしないようにしましょう。
では、臭いと思う臭いの量は、ウンチとオシッコのどちらが多いのかを紹介していきます。
臭気の溜まる場所
残念ながら臭気の割合の研究結果は見当たりませんでしたが、臭気が溜まる場所を考えると臭いの主な原因がわかります。
臭気が溜まる意外な場所は「壁」です。(参考:パナソニック株式会社 エコソリューションズ社の調査結果)。
排泄時・便器についた汚れに加え、特に男性が経ってオシッコをするときに飛び散る飛沫が壁に付着し、蓄積し、アンモニア臭の原因となります。
つまり、換気扇の位置は下記のとおりです。
男性が座ってオシッコするのであれば、アンモニア臭は気にせずに換気扇を下部に付ければOK
効率的
男性が経ってオシッコするのであれば、アンモニア臭を排除するため、換気扇を上部に付ければ各家庭のトイレの仕方によっても、換気扇の適切な位置は違います。
空気の循環効率
トイレを気持ちよく使うためには、臭いだけでなくトイレの空気が綺麗である必要があります。
つまり、トイレの空気の循環を良くする必要があり、これにも3つポイントがあります。
空気の流れを長くする
空気が動くと埃や湿気も動く
顔の近くに臭いが通らないようにする
具体的に説明します。
空気の通り道を長くする
室内の空気を循環させるためには、空気を隅から隅まで動かす必要があります。
つまり空気の動く道を長くすることで、個室全体の空気が入れ替わりやすくなります。
トイレの位置口付近の換気扇があると、トイレ奥の空気は動かない
トイレの奥に換気扇があると、トイレ入り口から奥まで、全体的に空気が動く
トイレの空気を綺麗にするためには、空気の動線を長くする必要があります。
一般的な換気扇の位置
一般的には空気の動線を長くするため、換気扇が上部に取り付けられています。
上部に設置されている理由は下記のとおりです。
24時間換気システムでの給気口・排気口の取り付け位置で好ましいのは、給気口は天井高さの1/2より下で床に近い場所、排気口は天井高さの1/2より上で天井に近い方が機能上効率よく換気ができるとされています。
これは建築基準法施行令20条の3 2項「排気口は、換気設備を設けるべき調理室等の天井又は天井から下方80cm以内の高さの位置…」を参考に使われる文言ですが、トイレは火を使わないので、下部に付けても法令違反になりません。
障害物も考慮する
空気の流れは物理的なモノ(便器等)で遮られるので、循環効率は下がります。
扉のアンダーカット(下部)から空気が入り、下部の換気扇から廃棄すると、上部の空気が入れ替わりにくい
トイレの扉の上部・下部のどちらに隙間があるか確認しましょう。
我が家が購入した一条工務店は上部・下部の両方に隙間があるので、どちらからも空気が入ってきます。
もしトイレの扉にアンダーカットしかない場合は、換気扇を上部に設置したほうが空気の循環効率が良くなります。
空気が動くと埃や湿気も動く
トイレの空気を動かすと、空気と一緒に埃や湿度も動きます。
空気を動かすこと自体が湿気・カビ・結露対策になりますが、一方で、埃も動きます。
そうすると、換気扇が上部にある場合、埃も吸い上げられて換気扇から外に出ようとしますが、埃の重さや空気の流れで、すべてが換気扇に吸い込まれません。
つまり、上部に付けた換気扇の下には、外に排出されなかった埃などが溜まりやすくなります。
換気扇の下に手洗い洗面があると最悪です。洗面が埃で汚れて掃除が大変になります。
顔の近くに臭いが通らないようにする
換気扇が高い位置にあると、排泄時に臭気を感じるようになります。
なぜなら、上部にある換気扇に臭気が引き寄せられるとき、臭気が顔の前を通ることになるからです。
排泄時は、オシッコのアンモニア臭を感じることは少なく、臭気のメインはウンチのインドールです。
そのため、換気扇が下にあると、臭気が顔の前を通過せず、嫌な臭いを軽減できます。
新幹線のトイレが狭いのに臭くない理由
新幹線のトイレのドアは上部がカットされ、換気扇が下部にあります。
これによって空気が上から下に流れるので、排泄時の臭気を感じにくく設計されています。
つまり自宅のトイレのドアも上部が開いていれば、換気扇を下部に設置することによって、顔の前を通過する臭気を回避することが可能です。
一条工務店は引き戸の上部はカットされているので、換気扇を下部に設置する効果が期待できます。
注文住宅の設計時であれば、トイレのドアの上部がカットされているかを確認しましょう。
掃除することを想定する
トイレの換気扇が上部にあると、非常に掃除がしにくいです。
便器があるので脚立を立てることもできず、便器の蓋は割れやすいので乗ることもできません。
一方で換気扇が下部にあると、奥まった場所にあったとしても、非常に掃除がしやすいです。
特に換気扇は埃が溜まりやすいので、定期的に掃除をしないとファンに影響します。
メンテナンス性を考えると、下部に設置したほうが圧倒的に掃除がしやすいです。
安全性を確認する
設計時に何もこだわらなければ、換気扇は上部に設置されます。
大きな理由は「安全性」です。
換気扇=ファンのため、手を入れれば挟み、ケガをします。
そのため、滞在時間の長い子供部屋やリビング、リビングに近いキッチン等は上部に換気扇を設置することなります。
トイレの滞在時間は長くなく、さらに奥まった場所に設置されているので、リビングほどはリスクが高くありません。
ただ、トイレは親の目が届かない場所でもあるので、万が一が心配であれば、子どもの手の届かない高さに設置しましょう。
室外への配慮をする
1階のトイレの換気扇を下部に設置すると、室外に立つ人の胸あたりの高さに排気口が設置されることになります。
基礎の高さ+床+換気扇の高さが、通行人の顔近くの高さになると、臭気の排出時に配慮が必要です。
家の前を歩いていると「なんとなく臭う」という可能性もあります。
もし換気扇を上部に設置していれば、基礎+天井高で、道路から約2.5mの高さに換気扇が設置されることになります。この高さでは通行人に臭うことはないでしょう。
2階・3階であれば気を遣う必要はありませんが、1階の場合は人通りの多い道に面しているか、等を配慮するようにしましょう。
我が家の設置例
我が家は3階建てで各フロアにトイレがあります。
フロア | 換気扇 | 設置場所 |
1階 | 利用 | 下部 |
2階 | 利用なし | 下部 |
3階 | 利用なし | 上部 |
1階のトイレ
1階のトイレは換気扇を利用しているので、メッチャ埃が溜まります。
下部なので、掃除がしやすくて便利です。
2階のトイレ
2階のトイレは、実は換気扇は下部にありますが、利用していません。
男性のトイレは常に座って実施し、トイレについた脱臭機能(アラウーノ)のみの利用で、トイレ内は全く臭いません。
使わない結果、当然ですが新品同様です。
3階のトイレ
3階のトイレは換気扇が上部にあります。
掃除がメッチャ大変です。足場がないです。
さらに結露も酷く、換気扇のメリットを感じません。
まとめ
いかがだったでしょうか。ちなみに我が家の換気扇の位置は下部派です。
下記にメリットとデメリットをまとめます。
上部設置のメリットとデメリット
メリット
- 空気の流れが長くなるので、トイレ内の空気が綺麗に保てる
- 事故の可能性は極めて低い
- 室外に配慮は不要
デメリット
- 臭気が顔の前を通る可能性がある
- 埃が舞いやすい
- 掃除がしにくい
下部設置のメリットとデメリット
メリット
- 男性がオシッコを座れば、臭気排出効率が最も良い
- 臭いが顔の前を通らない
- 掃除がしやすい
デメリット
- 空気の循環効率は良くはない
- 1階は室外に配慮する必要がある
- 子どもがケガをする可能性がある
いかがだったでしょうか。
おそらく男性が座ってオシッコするようになれば、下部に付けるデメリットの多くは解消されるので、後悔は少ないと思います。